実施履歴
中潟 寛 先生 (仙台市立病院 循環器内科)
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この度は、秦先生をはじめ仙台循環器病センターのスタッフの皆さんのご好意とご協力のもと、他施設での特別な環境でwatch and discussionをさせていただきました。
今回は70代男性のRCAの#1から#2にかけたダブルベンドのCTO症例でした。術前に何度もCAGを見たところCTOのentryが細かい分岐を伴っており同部位が本当にentryでよいのかが直前まで悩みました。一方でdistal exitはconusやbridge collateral sourceとLADからのmulti supplyのsep-4PD、sep-RVによりto and froしておりdistal visualizationは不明瞭でしたが、わずかに逆taperしているようにも見えました。entryおよびexitも同定に自信を持てないまま当日を迎え、当日の造影でdistal visualizationが良好であれば時間効率を考えPrimary Antegrade approach、不良な場合はPrimary Retrograde Approachからのrescue Antegrade Approachを計画していました。また、RCAの起始がCTで前方起始(土金先生からは事後にAngioではそこまでではなかったとご指摘ありました)から右に曲がる起始であり内腔も入口部から小さく、ガイド単体でのback upは困難と予想しアンカーありきと考えていましたが、conusは心室側に向かっており血管軸と逆方向であり同軸を保てないことも問題でした。
上記の理由からAnteは8Fr JR4SH、Retroは7FrSPB3.75SHを開始し同時造影をしましたがやはりdistal visualizationが不良であったために事前に計画していた4th sep(J channel score2)からCorsair PRO XSを使用しSION→SUOH03で開始したところ、15分程度でwire通過に成功しmicroもdistal exitまであげることができました。あとはR-CARTを成立するのみと一安心したのでしたが、そう簡単にはいきませんでした。
#1の肩を含んだダブルベンドに対してどう克服していくかが問題となりました。通常であれば肩の部分は操作性が上回るAnteからアプローチするように考えてはいたもののEntryに自身が持てずAnteのガイドのバックアップがとれないこととRetroが容易に進んだことからRetroからアプローチしていきました。
屈曲を考慮しSION blackで進めましたが思いの外病変が固く上がらず、gladiusにstep upするものの大弯側にそれてしまいwireを上げることができませんでした。ここで屈曲に対してdeflectionさせる意図でGN1に変更してRetroからあげようとしましたが、曲がりきれませんでした。Anteに切り替えconusにアンカーしながらentryらしき場所をGN2で進めるも進まず、conusをダブルワイヤーにしてアンカーしたのちにGN3にstep upしても刺さらず手詰まりとなりました。
再度RetroにもどりSION blackのKnuckleも視野にいれつつAnteのワイヤーを目指して再度あげていったところ肩口を曲がり切ってくれ最終的にExtend R-CARTでpull throughに成功しました。
治療後の反省で主に以下の点を指摘していただきました。
①RCAはそこまで前方起始とはいえずR-CART狙いであれば7FrでSALを使うことで奥までガイドを入れることができback upをとることができた可能性が高い。
②Retroからのintimal trackingにこだわりすぎていた。Retroがまわった時点で肩口の屈曲を操作がしやすいAnteからワイヤーを血管内に進めれば(M12など)もっと早く楽にR-CARTに持ち込むことができた。術前に不確かながら想定していたentry以外はentryと考えづら自身を持って刺すべき(刺さるべきところに刺さる)
③Anteの入口が不確かと考えていたのであれば、RetroからGN1を使っているということは矛盾があるどれもとても勉強になるご指摘でしたが、特に③についてはおっしゃる通りでした。distal exitが不確かであることからPrimary Anteをhesitateしたにも関わらず、同様にEntryが不確かにも関わらずRetroからGN1で狙いにいっていたことは矛盾でした。
術前の予想以上に難渋した症例でしたが、それなりの時間で安全に終われたことはよかったですが、治療後に総評をいただくことでたくさんのポイントを学ぶことができました。
自身で行った術前の準備と当日の判断と手技に、術後の的確なreviewがセットとなったwatch and discussionは1例であっても学びが多く、とても素晴らしい経験となりました。
日々成長を重ねて改めてまた挑戦したいと思います。
この度は貴重なご指導を頂きました土金先生に改めて感謝を申し上げます。
そしてこのような機会を自分のために用意してくれ、成功を自分のことのように喜んでくれた同志の秦先生、本当にありがとうございました!