「継子」プロジェクトとは
皆さん、初めまして。YES Foundation の細木 信吾です。
私は高知に生まれ、岡山と高知で育ちました。幼少期から剣道をしていて、続けることや技術を伝えることの大切さを何となく理解していました。2002年に PCI を志し、2011年から CTO 術者を始め、2020年に自分のカテ室を持つに至りました。
師である故・光藤和明先生の CTO PCI のエッセンスをベースに土金悦夫理事長の教えを融合した CTO の考え方や技術を継承・発展させ今後に伝えていくことが YES Foundation での私の大切な仕事です。
■CTO PCIを志す前に
CTO PCI は、PCI の中で最も難しく危険が伴う手技の一つであり、ほぼすべての PCI の技術が要求されます。ただ技術を求めることばかりに目が行ってしまうと、大切なことを忘れてしまいます。
剣道の話に戻りますが、私が小学生の頃は試合に勝つことばかり考えていました。昇段するにつれ、剣道とは『剣の理念の修練による人間形成の道である』という大きな目標を学びます。CTO PCI も同じで、『CTO PCI の目的はいつも患者さんのためである』という大きな目標を忘れないで下さい。
■柱と継子
2020年は『鬼滅の刃』がはやりました。鬼殺隊と呼ばれる剣士達が人喰い鬼をやっつける話です。鬼殺隊で最高位の剣士『柱』は、『継子』という直弟子を育成することで技術を継承していきます。YES Foundation の重要な活動の一つが『継子』の育成です。
皆さんが CTO を学ぶため、自院にエキスパートの術者を招いて PCI をしてもらうことは、患者さんにとって素晴らしいことです。しかし、皆さんにとっては真に Educational(教育的)でしょうか。土金理事長の CTOHWS スタイルを見習い、私の WS では、自院の先生が第1術者、私は第2術者になるスタイルをとってきました。PCI 前の戦略議論に始まり、デバイスの選択、ガイドワイヤーの扱い方、些細なことでも手技中に『してみせて言って聞かせてさせてみる』の実践が大切であると実感します。第1術者をしたとしても CTO 1例で学べることは限られています。YES Foundation を通じて、第1術者としての貴重な体験、積極的なライブへの参加で得られる疑似体験、すべてを積み重ねることが成長の近道です。そして、次世代の『柱』となり、さらに次の世代に考え方、技術を伝えて欲しいと切に願います。
■私が柱になること
私自身が今も CTO PCI 道の道半ばにおり、自分では柱にふさわしいとは思っていません。しかし、理事長より柱としての指名を受けた限りは以下の方針で、皆さんと共に CTO を極めていく所存です。『YES Foundation としての CTO 方略の指導』、『真腔を通す CTO PCI』、『Flat な精神状態での手技』です。
今や CTO は治して当然の時代です。これからは、その中で、①如何に効率的に(安全で速く)成功させるか、②中期・長期成績の改善につなげるか、③PCI レベルアップにつなげるかが問われます。患者成功を得るための最も『安全』な、穿刺部、ガイドの形状とサイズ、アンテかレトロかを含めた術前の方略の議論と実践が重要です。また、振り返りを行うことで PCI レベルアップの最大化を目指します。
現在、真腔、偽腔へのステント留置後の成績には様々な報告があり結論は出ていません。私は、ステントは真腔に置いた方が良いと信じています。偽腔に GW を入れてはいけないという意味ではなく、GW が偽腔に進んでいることを理解し、CTO 通過後に GW を真腔に戻します。時間はかかりますが、GWを速く通して時間を稼げばよいと考えています。
安定した CTO PCI のパフォーマンスを発揮するためには、安定した精神状態が求められます。しかし、見られていると緊張しますし、疲れてくると精神状態も下降します。術中、私は術者の1番の応援団になります。皆さんのベストパフォーマンスのために、フラットな精神状態が維持できるようサポートします。
■YES Foundation 『継子』スタイル
YES Foundation では、術者の皆さんのレベルや希望に合わせて、いくつかの指導スタイルをとります。Proctorship による随時指導方式(2nd operatorとしてのサポート、もしくはカテ室以外からの随時サポート)、Watching and discussion 方式(最後まで術者が単独で手技を行い、術後 discussion を行う)、皆様の希望をお寄せ下さい。尚、対象症例は CTO だけでなく、DCA など open vessel の complex PCI でも大丈夫です。
「YES Foundation では、術者の皆さんのレベルや希望に合わせて、2つの指導スタイルをとります。1つはもはや一般的になりつつあるProctorship による随時指導方式(2nd operatorとしてのサポート、もしくはカテ室以外からの口頭によるサポート)。もう一つはWatching and Discussion 方式(最後まで術者が単独で手技を行い、術後 discussion を行いながら術者の日常診療レベルの向上を目指す)です。皆様の希望をお寄せ下さい。
尚、対象症例はCTOなどのcomplex PCIには限りません。通常のopen vesselでも、と言うより寧ろそういう日常の病変形態に対するPCIのレベル向上を目指す有志ある先生方へのプログラムが継子です。
以上、私のYES Foundation での柱として初心表明でした。案ずるより産むが易し。皆さん勇気を出して『初めの一歩』を踏み出して下さい。