DCA Academy

2000年代に入りCypherの登場によりPCI後のステント再狭窄率が激減した結果、その数年後に米国製最後のDCA Flexicutの製造が中止されました。ある程度の再狭窄予防効果を発揮させるためには正確なIVUSの読影が必須であったDCAは、その以前より既に海外にはニーズは無く、IVUSがroutineになっていた本邦においてさえその煩雑な手技内容が理由で当時のCVIT資料に拠ればその使用率は全PCIの約1%でありました。このような状況から資本主義社会経済ではDCAの製造中止は当然の帰結でありました。分岐部、特にLMT周囲の病変に有用性を証明したPERFECT Registryも焼け石に水。DCAの正しい継承を目的に関西を中心に1990年代後半より活動して来たDCAクラブもその活動の休止に追い込まれ、新しく「YES CLUB」が立ち上がったのは別稿に述べた通りです。
2010年代に入り、星総合病院の木島先生と臨床工学士の添田さんの並々ならぬ御尽力によりニプロから国産DCA AtheroCutが誕生し、その後のプロクターシップなどの期間を経て現在では希望される先生方には使用できるようにはなっていますが、依然その全体の使用頻度は数%と考えられます。
私自身は「この使用率をもっと上げるべきだ」とは決して考えていません。PCIは様々なツールの導入により現在成熟期の最終段階と言ってもいいでしょう。そういう時代におけるDCAの適正使用は何か?そのためにはどうするべきか?を考える事のほうが重要です。
プラーク切除によりプラークシフトやカリーナシフトを抑制できるDCAの最も有効である病変は高度表在性石灰化の無い大きな分岐部病変である事は自明です。ではそのような病変に私達は日常どれくらいの頻度で遭遇するでしょうか?AtheroCut導入後の豊橋ハートセンターのデータでは、elective PCIの内DCAが必要とされるようなLMT分岐部病変は3.5%で、その内実際にDCAが用いられた症例は30%でした。すなはち全elective PCIから見れば1%で、奇しくも以前のCVITデータと一致しました。
なので、もう一つ私見を言わせて頂くと「全ての術者がDCAを出来る必要はない」と思います。CTOと同じです。全ての術者がCTOをやる必要はありません。ただそれで満足出来る術者は潔くDCA適合症例やCTO症例を自施設の他の医師や、必要なら適当な他施設に紹介する義務があります。自身の嗜好により患者様に不利益があってはいけません。それがイチ科学者である臨床医のあるべき姿であると私は確信しています。
では「DCAを上手くなりたい」有志ある若い先生にどのようにDCAを継承していけばいいのでしょうか?もう2度とDCAを市場から消さないようにするためにも、これは今極めて重要な命題であると改めて感じています。木島先生や添田さんの御恩に報いるためにも。
全てのニューデバイスには多かれ少なかれラーニングカーブがありますが、DCAは臨床的に最もそのハードルが高いと考えられます。CTOは仮にantegrade approachのみに留まるので有れば、おそらく術中の虚血は元よりPCIデバイスによる致死的合併症も起こらないでしょう。しかしDCAは違います。具体的にはまずIVUSの正確な読影によるプラーク部位の3次元的把握が必要です。その上で場合によってはST変化や血圧低下の嵐に晒されながらLMT周囲での素早くかつ正確なカテーテル操作が求められます。将来IVUS付きのDCAカテーテルが仮に出たとしてもこの点だけは変わりありません。更に万が一切除部位を誤って大きな血管穿孔が起きたりしたら………
結論を言うとDCA手技の習得には「正しい学習」と「修練」が必要です。幸い現在ではDESだけでなくDCBも使えるようになり、aggressive DCAを常に希求するような事は最早必要なくなりました。なのでまずはDCA使用のハードルを下げる事から始めねばなりません。それが最終的にデバイスの適正使用に繋がると考えられます。YES Foundationでは今後現代に則したDCAの教育プログラムを皆様と一緒に再構築し、「有志ある若手」に提供して参りたいと思います。
DCA Academy@YES Foundation開講致します。
併せて「Office DCA」も設置致しますので、実際お持ちの症例でのDCAの適応や実際のテクニカルな質問、本アカデミーに対する要望などがありましたら遠慮なく送って下されば理事一同で対応致します。
土金悦夫(豊橋ハートセンター)
DCA ACADEMY へようこそ
この度、DCA ACADEMY任せて頂くことになりました。座長として、ご挨拶申し上げます。
DCAはhistorical deviceではなく、入口部病変、分岐部病変、近位部病変で有用性を示し、Drug-coated balloon(DCB)との組み合わせによる良好な長期成績も示され、今なお重要な役割を担うデバイスです。
若手医師にとってDCAを学ぶ意義は、単に一つのデバイス手技を習得することにとどまりません。血管内イメージングで観察されるプラークの局在を透視画像へ投影して理解し、その病変をどのように削るべきか、また、どこを削ってはいけないかを考えるトレーニングが求められますが、このトレーニングは全てのPCI手技に通じる本質的なスキルにつながると言ってよいでしょう。そして近年、私が所属する星総合病院で長年インターベンション治療に携わってきた木島先生と添田技師長の御尽力によってATHEROCUT Mk2™が上梓され、7Fr transradialでのDCAがより現実的になるとともに、病変通過性そして操作性は著しく改善し、DCAは新たな局面を迎えていると言ってよいでしょう。
しかしながら、前座長の土金先生も御指摘のように、DCAのハードルは決して低くはありません。症例選択、IVUSによる正確なプラークオリエンテーションの把握、術中虚血の管理、そして冠動脈穿孔を含む重篤な合併症の回避、これらは教科書を読んだだけでは身につかず、経験者とともに段階的に経験を積み上げるほかありません。その継承には「正しい学習」と「修練」が必要であり、それを支える教育の場が不可欠です。
DCA ACADEMYは、DCAに関心を持つ若手インターベンショナリストのための学びの場です。手技の習得にとどまらず、適応の見極め、IVUSによる三次元的なプラーク評価、手技中の判断力、そして合併症対策まで、段階的に学べる教材と解説を提供していきたいと考えています。
「有志ある若手」に、DCAを「やってみたい手技」としてではなく、「患者のために正しく使える手技」として身につけてほしい。
—その思いをこのACADEMYに込め、次の世代へ確実につなぐこと、それが今、私達に課された使命だと感じています。
ぜひ、ともに学んでまいりましょう。
2026年6月
越田 亮司(星総合病院)
