Stingray News

ニッチだけれど、必要とする患者さんはいる
まずはStingrayの原理を示したアニメーションをご覧下さい。
要は閉塞遠位部のsub-luminal spaceにflat balloonを誘導して、2つある側穴のうちの内腔側からワイヤーにて穿通する(reentry)次第。
米国のベンチャー企業BridgePoint社のCEO、Chad Kugler氏に最初にこのStingrayバルーンのコンセプトを紹介頂いたのは2008年だったと記憶しています。既にretrograde approachも導入されていた時代でしたので、その斬新なコンセプトに驚愕し、直ぐに個人輸入を経て彼直々に豊橋ハートセンターに指導に来て貰い、LAD CTOがあっと言う間に開通したのを今でも鮮明に覚えています。まずこの症例を含めてFIMデータとして論文化され(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22121076/)、その後多数例による臨床試験(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22516395/)の結果を経て上市されました。このnew deviceの市場導入により欧米においてその後hybrid approachなる治療戦略が産まれた事は周知の事実です。
遅れる事5年以上かかって本邦にStingrayが上市されたのは2017年。奇しくも、hybrid algorithmを駆逐する旨の命を受け奔走する事約5年。Asian-Pacific CTO algorithmがpublishされたのと同じ年でした。
そこから本セクション顧問の川崎友裕先生とBridgePoint研究会を立ち上げ、エリアプロクターの育成を開始し、その後認定ユーザーが生まれるようになり現在に至っています。合計38名。
では現状本邦ではどれくらい使われているのか?
実は2021年は5症例でした。裏を返せばIVUSガイドTD法まで駆使して治療を行う日本のCTO治療成功率は高い、という事です。じゃあもう要らない?
最新の調査では10月末迄に先の38名によって2022年にpuncturing attemptされた症例は4例でしたが、全てリトライ症例や、retrograde approach含め様々なテクノロジーを駆使してもワイヤー通過に至らなかった症例でした。その結果は?
全例成功。
すなはち…
数は少ないけれど、Stingrayを必要とする患者様は居るという事実。そしてその患者様にとっては雲泥の差をもたらすデバイスであるという現実です。
おそらく現在ではDCAよりも臨床的にニッチなデバイスでしょう。
しかしながらそれを必要とする患者様が存在する以上、そしてそれを吸収して己の治療技術を高めようとするYES Foundationの若き有志会員様のために、今回改めてこのデバイスのupdateを取り上げる事に致しました。
実はこのStingray。海外市場に比べてとっても有利な点があるのをご存知ですか?
それは安い償還価格。実は「貫通カテーテル」のカテゴリーに分類されているのです。
ならば!?
それを利用しない手はそもそも無いのかも知れません。
座長:土金 悦夫(豊橋ハートセンター)
顧問:川崎 友裕(新古賀病院、BridgePoint研究会代表幹事)
羽原 真人(豊橋ハートセンター)
2022年11月
文責 土金 悦夫