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一般社団法人YES Foundation

 MICS Academy


近年のカテーテルデバイスと技術の進歩により、高度石灰化病変や慢性完全閉塞病変といった、従来は治療が困難だった症例にもPCIが可能となりました。しかし、外科的バイパスが望ましい症例に無理なPCIを行い、合併症を招くケースも見受けられます。

低侵襲心臓手術であるMICS CABG(小開胸による冠動脈バイパス術)は、患者の負担を抑えつつ良好な治療成績が期待され、特に胸骨を切らずにLIMAからLADへのバイパスが可能な点が、早期回復や合併症リスクの軽減に大きく貢献します。

MICS CABG単独でも多枝病変に対応可能ですが、PCIとの「ハイブリッド治療」はそれぞれの利点を活かした柔軟な戦略で、より良い治療結果をもたらします。たとえば、LADにはMICS CABGを、右冠動脈や回旋枝にはPCIを用いることで、以下のような利点が得られます:

  • LIMA-LADバイパスによる長期開存性と予後改善
  • 低侵襲かつ早期回復
  • 患者ごとの病変に応じた個別化治療

「PCI術者もMICSを理解すべき」というMICS Academyの理念は、現代の心臓病治療に不可欠です。無理なPCIを避け、適切な症例にハイブリッド治療を活用することで、多くの患者の予後とQOLの向上につながると確信しています。今後もMICS Academyでの議論を通じて、最適な治療戦略の共有が進むことを期待しています。

木村 祐之(広島ハートセンター 循環器内科)


これまで我が国の多くの心臓外科医は、オフポンプCABG(OPCAB)による動脈グラフトを多用した完全血行再建こそがPCIに対抗しうる唯一の道であると信じ、その実現を追求してきました。「OPCABによる完全血行再建」こそが正義であるという、いわば原理主義的な風潮の中で、私は2013年にMICS CABGを開始し、早くからハイブリッド治療の可能性に着目していました。しかし当時はこのアプローチは中途半端な術式と見なされ、なかなか受け入れられませんでした。

しかしこの10年で多くのRCTが発表され、外科医の間でも次第に「LITA-LADに加え、症例によっては回旋枝の重要な枝にも動脈グラフトを使用し、それをMICSで可能であれば、残りの病変はPCIで治療しても構わないのではないか」という考え方が浸透しつつあります。今後はCABGとPCIは競合するものではなく、互いに補完し合う治療選択肢として捉えることが求められます。そう考えると、「Hybrid(混成)」というよりは、より良い血行再建を目指して両者を調和させるという意味で「Blended coronary revascularization 」と呼ぶほうが適切かもしれません。それぞれの患者に最適な血行再建を提供するために、内科の先生方とともに考えていければと思っています。

坂口 太一先生(兵庫医科大学 心臓血管外科)


私がまだ大阪在職中の時代にLAD一枝病変の患者様を受け持ちました。詳細は忘れてしまいましたが、LAD近位部の複雑病変で、その当時のテクノロジーでは所謂PCI非適合病変でした。丁度その頃、当時MIDCABと言われた手技が登場していたので、外科の先生方と相談して豊橋から大川育秀先生(現名古屋ハートセンター院長)にお越し頂きました。勿論素晴らしい手技結果と長期予後だったんですが、何が1番印象に残ったかと言うとそのスピードでした。オペ室に入ったと聞いてから私が医局でちょこちょこっと仕事してカテ室カンファレンスルームに戻ったら、なんと既に概ね手技を終わらせた大川先生がそこにいらっしゃいました。おそらくLITA剥離から吻合手技そのものは小一時間?だったのではないかと記憶しています。

私自身はその後LAD近位部を含めて様々な複雑病変をPCIして来ましたが、CTOで長時間かかったり、石灰化でrotablatorによって一時的にせよslow flowとか起こったりする度、LITA-LADのほうがよっぽど患者様にも医療経済的にも優しいのではないか?と反省させられました。

現在PCIテクノロジーは成熟しておりLAD近位部病変にLITA-LADがgolden standardとは決して言いません。しかし一方で、勿論LAD末梢の形態やテリトリーの大きさにも依存しますが、条件が合えばPCIよりMICSのほうが急性期及び長期予後に適している患者様がいらっしゃるのも事実だと思います。更には多枝病変に対してはMICS PCIのhybrid治療の選択枝もあるはずです。本稿では、まず循環器内科医に向けて最新のMICS情報をお届けすると共に、将来的には心臓血管外科医の先生方とのコミュニケーションの場として機能する事を通じて、より良い治療を患者様に提供出来るようにしたいと思います。

YES Foundation 理事長
土金 悦夫


座 長: 木村 祐之(広島ハートセンター 循環器内科)
顧 問: 坂口 太一先生(兵庫医科大学 心臓血管外科)
御略歴
世話人: 後藤 芳宏(豊橋ハートセンター 心臓外科)
御略歴 山根 吉貴(広島ハートセンター 心臓血管外科)
御略歴

MICS Academy @ YES Foundation

掲載日 内容 詳細
2025年7月22日 001:座談会「なぜMICSCABGなのか?」
2025年9月1日 002:レクチャー「本邦における AS 治療の現状 〜SAVRの役割は?〜」
2025年12月15日 003:レクチャー「当院におけるMICSの取り組み 冠動脈多枝病変に対するBLENDED治療」
2025年12月22日 004:レクチャー「MICS CABGの現状と展望」
2026年1月19日 005:MICS CABGの治療成績〜Hybrid(Blended)coronary revascularization〜 (004より抜粋)

Office MICS

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■MICS-CABG(低侵襲冠動脈バイパス術)症例相談窓口のご案内

高度石灰化や慢性完全閉塞病変など治療に難渋が予想される病変に対して低侵襲心臓手術であるMICS-CABGとPCIを組み合わせた治療、いわゆるHybrid (Blended) coronary revascularizationは冠動脈治療の重要な選択肢の一つであり、その普及のためYES Foundationでは、実際に治療を検討されている症例に対して循環器内科医向けの症例相談窓口を設置しました。
「通常の開胸CABGが困難」「PCIと外科治療の選択に迷う」「低侵襲手術の適応可否を知りたい」など、治療方針にお悩みの症例がございましたら、お気軽にご相談ください。
冠動脈造影、CT画像、心エコー所見、併存疾患などの情報をもとに、MICS-CABGの適応可否や治療戦略について、全国のMICS-CABGのスペシャリストの心臓外科医が個別に検討・回答いたします。また必要に応じて実際の治療のお手伝いも致します。
患者さんにとって最適な治療選択を行うための一助として、ぜひ本窓口をご活用ください。

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