実施履歴
岸田 峻 先生 (大分県立病院 循環器内科)
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岸田 峻 先生(大分県立病院循環器内科)
症例は70代男性でLAD ostiumからの閉塞病変で病変長が比較的短い病変でした。本症例は私が初めてのCTO operatorを務めさせて頂いた症例で、常に緊張感に満ちておりましたが、一方で非常に興奮した気持ちも同時に感じておりました。
事前のstrategyの検討会では、土金先生より私が想定していた治療戦略の足りない部分や矛盾している部分をご指導頂き、より具体的な治療戦略を持ってCTOの治療に臨みました。LAD ostiumの病変であり、CTO entryを捉えられず、助手に入って頂いた先輩の先生にAntegradeのapproachを行なって頂きました。Retrograde approachに方針を変更した段階で再びoperatorを務めさせて頂きましたが、4PD-Septalのcollateral channelをSUOH03が抵抗なくLADまで上がっていった瞬間には、これまで感じた事がないような快感を覚えました。その後は再度先輩の先生に手を代わって頂きながら、R-CART、Externalizationを行い、LM-LADのstentingを行い、治療を完了しました土金先生には随所で治療方針のご指導を頂き、自らの未熟な点を反省しつつ、CTO治療の基本を学ばせて頂きました。
非常に長時間の手技となってしまいましたが、最後までご指導頂きました土金先生、CTO WSの関係者の皆様に心より感謝申し上げます。自らの手技の足りない点、strategyの足りない点、device特性を理解できていない点などの様々の課題が見つかりました。CTO operatorになれるようにより一層励んでいこうと思います。この度は貴重な機会を頂き本当にありがとうございました。古閑 靖章 先生(大分県立病院循環器内科)
大分県立病院循環器内科の古閑靖章と申します。岸田先生の手技の助手と手技のバックアップを務めました。
LAD入口部からの閉塞で特異なdimpleの造影所見を伴っており、当初より一筋縄では行かない様相を呈しておりました。その懸念通り、HL枝からのIVUS観察を行うとCTO entryは確かにdimpleを伴っていたものの、その前を遮る様にひだ状の構造物が存在しておりました。IVUSガイド下にこの構造物を迂回するようにdimpleに進める事ができても、entryを穿破するための力を直線的に伝える事ができず、step upを重ね、ようやくConquest Pro 12 gでentryを捉える事ができました。しかし、Conquestは血管の走行から大きく外れ冠動脈穿孔も懸念される位置に進みましたのでこのワイヤーはそのまま留置し、Gaia Next 4をより血管に近い位置に進めました後にRetrogradeのpreparationを行いました。R -CARTを行いましたがretrogradeのガイドワイヤーを真腔内に導く事ができず、LADからのIVUS観察を行うと、subintimal spaceで交通はできているものの病変近位側の真腔からsubintimal spaceへの移行部の石灰化に阻まれ、retrogradeのワイヤーが再びsubintimal spaceに潜っている事が分かりました。原因としてretrogradeのワイヤーにflexibilityが低いものを用いていたため、その直進性ゆえに移行部の石灰化を迂回できていない事が分かりました。このため、SION blackに強いカーブをつけて石灰化を迂回する様な操作を加える事でretrogradeガイドワイヤーの病変近位側の真腔に進める事ができました。
上述した箇所の他にもretro channel tracking時のマイクロカテーテルの選択、donor arteryの狭窄の取り扱い等、多くの事を学ばせて頂きました。
CTO未経験の岸田医師には大変荷が重い症例だったと思いますが、多くの事を得たのは間違いないと思います。土金先生には長時間の手技にも関わらず終始丁寧なご指導を頂けました。深く感謝申し上げます。