実施履歴
落海 祐介 先生 (広島ハートセンター 循環器内科)
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今回の症例は、2年前に前医で心不全のため入院された際、原因精査目的に施行された冠動脈造影検査において、潅流域の大きいRCA #2に90%狭窄を認め、同病変に対してPCIが施行された症例です。その際、PCI中に冠動脈解離を来したようで、bail-outとしてステント留置が行われたものの、#2のステント遠位から#4にかけて解離腔が残存していたとのことでした。その後は末梢血流が保たれていたことから、経過観察の方針となっていたようです。
今回、当院に心不全のため再入院され、原因精査目的に冠動脈造影検査を施行したところ、前回認めていた解離腔が引き続き残存していることを確認しました。末梢までの冠血流は維持されていたものの、解離腔によるものと考えられる真腔の圧排により、血管の途中に複数箇所の狭窄を認めました。また、いずれかの部位では真腔と偽腔との交通が残存しているものと考えられました。本症例では、患者様が40歳代と若年であり、さらに左室駆出率(EF)が20%台と著明に低下していることから、今後の心機能および長期予後を考慮し、残存する解離腔および真腔圧排による狭窄に対してPCIを施行する方針としました。
まず、病変が#4まで広範囲に及んでいることから、長い病変に対するデバイス操作およびwire操作を考慮し、ガイディングカテーテルによる十分なbackup supportを確保することを優先しました。また、RCA #1はややなで肩の形態を呈していたことから、ガイディングカテーテルにはSAL 1.0を選択しました。MC+Sion blueでwire crossingを試み、その後Sion blackへ変更することで、ひとまず末梢までwireを通過させることに成功しました。しかし、IVUSを進めると、既存ステントは#1~#2に留置されているものの、入口部で十分に圧着されておらずまた、wireは入口部からstent strutを通過してステント内へ進入していることが確認されました。さらに、IVUSは#2までしか進めることができませんでしたが、Sion blackは途中から残存する解離腔へ迷入していることが判明しました。右冠動脈入口部でのwire manipulationも考慮し、ガイディングカテーテルをJR 3.5へ変更しました。既存ステントは内腔が狭く、stent strutを介してwireが進入している部位もごく限局的であったことから、その部分のみをRotaで処理し、入口部から改めてstentを留置する方針としました。
その後のwire crossingでは、まずknuckle wire techniqueを用いて#2まで通過させておりましたのでIVUSで確認したところ、少なくとも既存ステント内をwireが通過していることが確認できたため、wireは真腔内を走行している可能性が高いと判断しました。その上で、MC+Sion blackを用いて再度wiringを行い、無事に末梢までwireを進めることに成功しました。IVUSでは、#2~#4にかけて解離腔が残存し、また#3で真腔が圧排されていることを確認しました。そこで#2および3に対してPOBAを施行した後、stentを留置することで解離腔を十分に圧排し、真腔を確保することに成功し冠血流も改善したことを確認し、手技を終了しております。
今回の症例では、既存ステント入口部の構造的な問題に加え、残存する解離腔へのwire迷入や真腔の圧排など、複数の問題が重なっており、難渋する症例となりました。一方で、IVUSによるwire positionおよび血管内の解剖学的評価を繰り返し行いながら、ガイディングカテーテルの変更、Rotaによる入口部の処理、knuckle techniqueを用いたcrossing、さらにMC+Sion blackによる再wiringを組み合わせることで、最終的に良好な血流を得ることができました。
改めて、プロクターとして熟練された先生に直接ご指導いただきながら治療を行うことで、より安全かつ質の高い治療を患者様に提供できることが、YESの寺子屋プロクター制度の素晴らしいところであると感じております。
この度も貴重なご指導を賜り、誠にありがとうございました。
